人間 ― 不可解な生きもの

「ブリューゲル」ブームがきている(その一)

現今日本における美術展の種目・回数は相当なものである。かつては印象派近辺の時代が長く続いた。さらにイタリアルネッサンス関連が当然続く。それもダ・ヴィンチ・ラファエロに発し今はカラヴァッジオなどに相当目が向くようになってきた。さらにゴヤ・ベラスケスらのスペイン絵画であろう。それでもバルビゾン派、ピカソ・マティスまで含めた印象派近辺は根強い人気がある。そういった時代を経、さらなる要因に海外旅行の日常化で、ヨーロッパ旅行もリピーター化してきているのも後押しだろう。よって日本人の洋画鑑賞領域は成長してきた。企画側は掘り下げてきているし、展示方法なども格段の進化だ。

近年オランダ(ネーデルランド)画家であるフェルメールが世界的にも急脚光を浴びてきた。日本にも何枚も来て特に代表作等「絵画芸術」は愛好家をうならせた。

それでも今回主題の「ブリューゲル」という画家の名は絵画をかなり好きな人でないと今の日本ではまだよく認知されていないだろう。その「ブリューゲル」は大きく言うとフランドール画派である。フランドールとは今のベルギーあたりであり、北方ルネッサンス繚乱の地である。活躍した画家に絞り、かつ大立者の名をあげるとざっと古い方からヤン・ファンアイク、ヨアヒム・パティニール、ハンス・メムリンク、ロヒール・ファン・デル・ウェイデン、ルーベンス、ファンダイク(その二氏は完全にバロック時代)らである。念のためレンブラント、前述フェルメールはオランダ(ネーデルランド)を代表する画家であり、デューラー、ルーカス・クラナハを代表とする、中南部ドイツ系の画家は重なる部分もあるが一線を画す。2017年の「ルーカス・クラナハ~有名作はマルテイン・ルターの肖像」の単独企画展は冒頭に述べた鑑賞領域の拡張の証明のようなものである。

それに加え本稿主題の「ブリューゲル」はまず「ピーター・ブリューゲル一世、生年推定1525~30-没年1569・9月」である。そして氏(以下大ブリューゲル)の息子にピーター・ブリューゲル二世(1564~1638)、ヤン・ブリューゲル一世(1568~1625・1月)がいる。大ブリューゲルは若死にした。前述2人の息子は幼児であったので、父の手ほどきは受けていない。そして氏の妻はついた師匠の娘であり、その妻の母は女流細密画家として知る人ぞ知る存在だという。私は自称B級鑑賞者であるが、ブリューゲル一派はヨーロッパの美術館などで相当数みてきたが起稿するにあたり再整理・照合する必要がでてきてよくわかったことが多々であり、私にとって幸便であった。

まず氏についてであるが、生まれはブレダという町の近郊のブリューゲル村で「ブリューゲル村のピーター」ということだ(今回初めて知りヘェーだった)。修行の経歴はもちろん当時は正規な美術学校はないので、私塾を兼ねた師匠工房に入りその後独立扱いでアントワープの画家組合に登録、イタリアに3年近く遊学もする(それはエリートコースの証であろう)。さらにヘェーなのは氏の描いたフランドール地方は比較的平坦であるが、その風俗画(人々が集う祭りや享楽場面)のバックの風景の遠景はイタリアアルプスをあしらっているのが多いということだった。

氏自体は比較的若死になので現存する油絵原画は40数枚という。もちろん消失してしまったものが多数あろう。ある著名美術館がウチで一番高い絵は氏の原画だと言うところがあったが、それで納得がいった。よってフェルメールも現存原画は40枚に満たず、鑑賞全制覇したい人々が多数いるのと同様、氏の原画もその対象としている人々がいるのも今回知った。 (その二に続く)